留学で得たかけがえのない財産:語学学校での出会いと学び

学生時代、私はアメリカ・ボストンに留学しました。目的はもちろん英語力の向上。しかし、そこで得たものは語学力だけではありませんでした。文化の違いに戸惑い、孤独に打ちひしがれながらも、さまざまな国の友人と出会い、深く学び、今でも社会人としての人生に活きている、そんな私の体験を綴りたいと思います。

【留学初日:緊張と孤独のスタート】
ボストンに到着したのは9月の終わり。街はすでに秋の気配に包まれていて、レンガ造りの建物と紅葉が美しく調和していました。空港からホームステイ先まで送ってもらった車の中、私は期待と不安で胸がいっぱいでした。

翌日から語学学校が始まりました。世界中から学生が集まってくる学校で、クラスメートにはスペイン、韓国、サウジアラビア、ブラジル、フランスなど、さまざまな国籍の学生がいました。

けれども、最初の1週間は正直、孤独でした。自分の英語が相手に通じるかどうか、恥ずかしさもあり、なかなか話しかける勇気が出ませんでした。周りの学生たちはすでにグループを作っていて、私はぽつんと一人。昼休みも教室の隅でお弁当を食べる毎日でした。

変化のきっかけは「Hello」
そんな私を変えたのは、ある日クラスメートのルーカス(ブラジル人)がかけてくれた一言でした。

「Hey, you wanna join us for lunch?」

たったこれだけの一言でしたが、私の世界が広がるきっかけになりました。その日、彼のグループと一緒にランチを取りながら、拙い英語で自己紹介をしました。すると、みんながニコニコしながら話を聞いてくれて、わからない単語はゆっくり説明してくれました。

それ以来、少しずつ他のクラスメートとも話すようになり、友達の輪が広がっていきました。

【英語以上に学んだ「多様性」の価値】
語学学校では、もちろん英語の授業が中心でしたが、放課後は自由時間が多く、自然と友人たちと一緒に街を歩いたり、カフェに入ったり、時にはお互いの国の料理を作って紹介しあったりしました。

中でも印象的だったのは、**「文化の違いを認め合う姿勢」**です。宗教、食文化、価値観…どれ一つとっても、自分とは違う背景を持つ人と接することで、私は「正解は一つではない」ことを実感しました。

例えば、ラマダンの期間に断食をしていたサウジアラビアの友人とは、夜に集まって食事を共にしました。韓国人の友人とはカラオケに行き、日本と韓国のポップカルチャーの違いを語り合いました。

「違い」が壁になるのではなく、「違い」があるからこそ面白い。これがボストンで学んだ最大の収穫だったと思います。

【帰国後、社会人になってからの「真の価値」】
ボストン留学を終え帰国し、一般企業で働き始めました。一見すると、英語を使う機会はほとんどなく、語学力が直接仕事に役立つことはありませんでした。

それでも、ボストン留学の経験は、確実に私の中で生き続けています。

一つは、どんな人ともコミュニケーションを取ろうとする姿勢。社内の異なる部署の人、取引先の外国人担当者、どんな相手にも物怖じせず話しかけることができるのは、あのときの勇気ある「Hello」に始まる経験のおかげです。

また、多様な価値観を受け入れる柔軟性も養われました。チームでプロジェクトを進める中で、意見がぶつかることはよくありますが、「違うことが悪いことではない」と思えるようになったのは、あの語学学校での異文化交流の時間があったからこそです。

【最後に:留学を迷っている人へ】
「英語が話せないから不安」「友達ができるか心配」…私もかつてそう思っていました。けれども、あのとき一歩を踏み出したことで、私の世界は大きく広がりました。

英語力は後からついてきます。大切なのは、最初の一歩。勇気を出して一言「Hello」と言ってみることです。

ボストン留学での経験は、間違いなく私の人生を豊かにしてくれました。そしてそれは、今もこれからも、私の大切な財産であり続けるでしょう。